川が氾濫したとき、拠点はどうなるか。 浸水の深さと、水が届くまでの時間を、いま答えられますか。

Case 2019.10.25 / Ichinomiya RiverBreach scenario / 30–90 sec per run

FloodRecovery は、川が氾濫した場合の浸水の範囲と深さを、地図の上で確認するためのサービスです。公的機関の地形・雨量・建物データと浸水計算を組み合わせ、過去の大雨の再現と比較できます。

一宮川流域の地図に、2019年10月25日の大雨の再現で16時までの最大浸水深を色分けして表示した画面

Recent disasters in Japan

2019年10月25日の大雨では、茂原市など一宮川流域で4,337棟が浸水しました。FloodRecovery は、この大雨の再現を対象とした初期実証(PoC)の段階です。利用者が地図で範囲を描き、川の決壊地点を選んで、氾濫した場合の浸水をご自身で計算する機能を備えています。

Sources

企業の BCP や自治体の防災計画に必要な「川が氾濫した場合に、どこが、どの深さまで浸水するか」を、利用者ご自身が計算して確認できるようにします。

  • 氾濫した場合の浸水計算

    地図で範囲を描き、川の決壊地点と岸、決壊の幅、川の水位を選ぶと、その地点で氾濫した場合の浸水を計算します。1回の計算は30秒から1分半程度です。結果は、浸水の深さ、氾濫からの時間ごとの広がり、水が届くまでの時間、浸水する建物の数です。

  • 過去の大雨の再現と記録の比較

    2019年10月25日の大雨を、雨量計38か所の観測から再現します。国土地理院の浸水推定(輪郭線)を重ね、計算と記録の違いを地図の上で確認できます。条件の違う計算どうしを左右に並べる画面もあります。

  • 出典つきのデータ管理

    各データの出典・取得状況・利用条件・観測時刻を一覧にし、地図のすべての層に出典を付けます。雨量は浸水とは別の層で表示し、取り違えを防ぎます。

Application screens

  1. 範囲と決壊地点を選ぶ
  2. 氾濫した場合の浸水深
  3. 浸水する建物
  4. 過去の大雨との比較
  5. 出典の一覧
範囲と決壊地点を選ぶ:地図に描いた四角の範囲と、川の線の上に置いた決壊地点。左に面積、地形と建物データの有無、堤防の高さ相当の水位を表示し、データがそろっていない所を網掛けで示した画面
氾濫した場合の浸水深:選んだ地点で川が氾濫した場合の最大浸水深を、6区分の色で表示した画面。時間は氾濫から6時間後まで
浸水する建物:範囲内で浸水する建物869棟を深さの区分ごとに集計し、建物ごとの最大水深と水が届くまでの時間を一覧にした画面
過去の大雨との比較:条件の違う2つの計算を左右に並べ、国土地理院の浸水推定との一致の指標を表にした画面
出典の一覧:各データの出典・取得状況・利用条件・観測時刻を一覧にした画面

地図で範囲を描き、川の線をクリックして決壊地点と岸を選びます。範囲内の地形・建物データの有無と、計算できるかどうかをその場で表示します。

選んだ地点で川が氾濫した場合の最大浸水深を、国の手引きに沿った6区分の色で示します。時間は「氾濫から X 時間後」で表し、実際の日時は付けません。

範囲内で浸水する建物の数を深さの区分ごとに集計し、建物ごとの最大水深と水が届くまでの時間を一覧にします(建物データは PLATEAU)。

過去の大雨の再現では、条件の違う計算どうしを左右に並べ、国土地理院の浸水推定と比較します。

各データの出典・取得状況・利用条件・観測時刻を一覧でご確認いただけます。


計算の精度は、2019年の一宮川の浸水記録と比べて数値で確認しています。結果には使った条件と精度を必ず添えるので、社内の判断の根拠としてお使いいただけます。

検証の画面。的中率や一致度などの指標を、浸水の深さの区分ごとに表にしている
Hit rate / 的中率
0.85
CSI / 一致度
0.43
False alarm / 空振り率
0.54

2019年10月25日の大雨の再現を、国土地理院の判読範囲(水深0.5m超)と比較した実証段階の数値です。性能を保証するものではありません。計算は輪郭線より広めに出る傾向があり、精度を上げるには河道断面・堤防高(千葉県のデータ)と雨量の総量の確認が必要です。

衛星(Sentinel-1)は、この事例ではピークの5日以上後の撮影しかなく、浸水は写っていませんでした。検証できない場合は、そのことを明示します。

オープンソースの浸水計算エンジンと公的機関の公開データを組み合わせ、流域全体の浸水を短い時間で計算します。

1回の計算は、約9分。

About 9 min per run / Compare many scenarios in a day

台風の最中でも、事前の計画でも。決壊地点や川の水位を変えた計算を短時間で並べ、拠点ごとの対応の優先順位を決められます。

1回 約9分の計算を、1時間に6回並べた例です(単純計算)。条件のラベルは例です。
  1. 01

    流域全体を、1回約9分で

    一宮川流域全体(約128万マス)について、36時間の大雨とその間の浸水の移り変わりを、1回約9分で再現します(2019年10月25日の大雨で計測)。利用者が範囲を選んで氾濫した場合を計算するときは、1回30秒から1分半程度です。

  2. 02

    1時間に6通り程度

    流域全体の再現でも、単純計算で1時間に6通り程度を計算できます。決壊地点、川の水位、雨の降り方などを変えた結果を比較画面で並べ、どの拠点から手を打つかを決める材料になります。

    Compare screen
  3. 03

    どの条件が結果に効くかを確認する

    実証では、雨の分布・河道の深さ・浸透・調節池などの条件を変えた計算を重ね、どの条件が結果に効くかを確認しました。

※ 大雨の最中に、そのときの観測を取り込んで計算し直す使い方は、今後の検討課題です。

How it works

オープンソースを土台にした、独自の計算の仕組み

20m四方の計算格子の中に、5m間隔の細かい地形(4×4)を持たせる模式図 20 m 5 m
20 m grid + 5 m subgrid (4 × 4)
青:周りより低く、水が溜まりやすい所(模式図)
  1. 01

    範囲を描くだけで、モデルを自動で組み立てる

    地図で範囲を描き決壊地点を選ぶと、地形・土地利用・川・建物の切り出しから計算モデルの組み立てまでを自社開発の仕組みが自動で行います。専門家が手作業で数日かけていた準備が、利用者の操作だけで済みます。

  2. 02

    公的データを、出典つきで統合

    国土地理院の標高、PLATEAU の建物、気象庁・千葉県の雨量と水位を、範囲に合わせて自動で取り込みます。どのデータから何を計算したかを、結果からたどれます。

  3. 03

    計算エンジンはオープンソースの SFINCS

    20m四方の格子に5m間隔の細かい地形(subgrid、1つの格子に4×4)を持たせ、浸水の広がりに必要な部分に絞った式で解きます。格子数を抑えながら、低い所に水が溜まる効果を残せるため、流域全体でも1回約9分です。

  4. 04

    GPU での計算に向けて準備中

    いまは Mac の CPU で並列に計算しています(30スレッド)。計算の実行先を切り替えられる作りにしてあり、GPU での高速化は準備中です(実測前)。

※ 計算時間は、格子の細かさ・再現する期間・条件によって変わります。簡略化した式を使うため、堤防の決壊口付近の急な流れなどは得意ではありません。

  • SFINCS

    2次元の浸水計算エンジン(オープンソース、GPL-3.0)。20m格子に5mの細かい地形(subgrid)を組み合わせます。

    浸水計算

  • HydroMT

    地形や雨などの入力データを、計算用のモデルに組み立てるためのオープンソースのツールです。

    モデルの組み立て

  • 38 gauges

    気象庁アメダスと千葉県の観測所、あわせて38か所の雨量計の観測から、雨の分布を作って入力します。

    雨の入力

  • MapLibre GL JS

    2Dの地図表示に使っています。計算結果と観測を同じ地図の上に重ねます。

    2D 地図

  • CesiumJS

    3Dの地形表示に使っています。地形の上で浸水の広がりを確認できます。

    3D 地形

  • 6 classes

    浸水深は国の手引きに沿った6区分の色で表示し、0.1m未満は表示しません。

    浸水深の色分け

地図のすべての層に出典を付け、どのデータから何を計算したかをたどれるようにしています。

Data we use

Our stance / 私たちの姿勢

計算結果は観測の代わりではなく、条件を変えて比べるための想定です。結果には使った条件と精度を必ず添え、社外や一般への公表には使いません。この前提を共有できる方と、実際の流域で検証を重ね、使える形に育てたいと考えています。

Who we would like to work with / ご一緒したい方

  • 自治体の防災担当部局

  • インフラ事業者

  • 企業の BCP・リスク管理部門

  • 研究機関

  • データのご提供・その他


公的機関が公開しているデータと、オープンソースの技術を使っています。

  • 国土地理院標高 DEM5A・DEM1A・DEM5B・DEM10B、浸水推定図、地理院地図ベクトル

    計算の土台になる地形データです。5m 間隔の航空レーザ測量の標高を優先し、ない所は 10m の標高で補います。2019年の浸水推定図は、計算の精度を確認する比較相手に使います。

  • 国土交通省 PLATEAU建物

    3D 都市モデルの建物データです。浸水する建物の数と、建物ごとの最大水深・水が届くまでの時間を出すのに使います。

  • 気象庁 アメダス雨量

    過去の大雨の再現で、雨の分布を作る観測値です。千葉県の観測所とあわせて 38 か所を使います。

  • 千葉県水位・雨量

    県の観測所の水位と雨量です。過去の災害の川の水位を、氾濫した場合の条件として選べます。

  • Copernicus Sentinel-1衛星画像

    欧州の観測衛星のレーダー画像です。浸水の範囲の確認に使いますが、撮影の時刻が合わない場合はそのことを明示します。

  • SFINCS浸水計算(GPL-3.0)

    オランダ Deltares が公開する 2 次元の浸水計算エンジンです。当社の仕組みの計算部分にこのエンジンを使い、別プロセスとして呼び出します。

  • HydroMTモデルの組み立て

    地形や雨などの入力データから計算モデルを組み立てるオープンソースのツールです。当社の自動組み立ての中で使います。

  • MapLibre GL JS2D 地図

    地図表示のオープンソースライブラリです。計算結果と記録を同じ地図の上に重ねます。

  • CesiumJS3D 地形

    3D 地形表示のオープンソースライブラリです。地形の起伏の上で浸水の広がりを確認できます。

※ 利用しているデータ・技術の一覧です。提携関係を示すものではありません。

Contact

実証へのご参加、データのご提供、他の流域での導入のご検討について、ご相談を承ります。

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